2007年06月01日

現代言語学批判:目次

 
対象から表現に至る言語の過程的構造に着目し、独自の理論を展開した三浦つとむ。その理論を継承・発展させ表現構造の謎を解く。
(カバー帯)

・・・ここに集めたような論文は、学問的な価値が大きいだけでなく、謎解き読物としても面白く有益です。上田氏の送り仮名論も、語形明示説や分担表記説の極限形態を批判するところまで行くと、笑いごとではないと判ってはいても、落語より面白くて腹をかかえます。私は病院のベッドで宮下、上田、鈴木氏から別の論文をいくつか読ませていただきましたが、「灰色の脳細胞」のリハビリテーションに役立ったことを感謝しております。

学問の仕事をする者にとってもっとも嬉しいことは、「何とか賞」や「何とか章」をもらうことではなくて、自分の理論を正しく理解して役立ててくれる者が出ることです。それゆえこの論文集の諸氏が私の理論を役立てて下さったことを嬉しく思い有難いと思っております。(三浦つとむ「編集者あとがき」より)



目次

■なぜ送仮名を破壊するのか 上田博和 ※1

第一章 送仮名の本質
 一 訓読みと送仮名
 二 振仮名と送仮名
 三 訓と訓読み
 補論一 振仮名と送仮名・補遺
 補論二 漢字の読み書きの出題法・批判
第二章 送仮名の認定
 一 二つの送仮名観――訓読み表示説と語形明示説――
 二 新戦後版の語形明示説――
 三 「送仮名は片仮名にも付く」か――語形明示説の極限形態――
第三章 送仮名法の諸問題
 一 <含む語規定>論
   ――<含む語規定>の拡大による<語尾原則>適用例の縮小
 二 <語尾・語幹>論――時枝誠記説の批判と継承――
 三 <語尾原則論>――<語尾>概念の誤りによる<語尾原則>の崩壊
  (一)「語尾=変化する部分」説の文字通りの適用
  (二)「語尾語幹区別無し」説の問題
  (三)<形容詞>「シク活用」説の無視
  (四)「不変化語尾」説の正体
 四 送仮名の破壊と抹殺――分担表記説の極限形態

■中国人は、語をどのように分類してきたか――『馬氏文通』以前―― 内田慶市
はじめに
第一章 「辞」或いは「詞」について
第二章 「助字」について
第三章 「虚字」「実字」について
第四章 『馬氏文通』以前における語の分類

■変形文法の展開とホーキンズの冠詞論 宮下眞二
はじめに
第一章 変形文法の展開
 一 変形文法の展開
 二 統語構造と意味
 三 非文とは何か
 四 ホーキンズの変形文法評価
第二章 ホーキンズの冠詞論
 一 はじめに
 二 定冠詞は名詞の対象を特定するか
 三 定冠詞と不定冠詞との基本的相違点
 四 冠詞の本質
 五 修飾語句を伴う名詞と定冠詞
 六 定冠詞は不定冠詞の変形か
 七 不定冠詞は何故前方照応しないか
 八 定冠詞と指示代名詞との違い
 九 結び

■サアルの言語論――認識の検討を避けて認識と言語との謎が解けるか――宮下眞二
はじめに
第一章 変形文法と日常言語学派
第二章 サアルの言語論

■フランス語時称体系試論 鈴木覚
はじめに
第一章 言語表現の成立条件
第二章 時称とは何か
第三章 現在形
第四章 複合過去形、近接過去形、近接未来形
第五章 単純過去形と半過去形
第六章 単純未来形、条件法現在形、接続法現在形、同半過去形
むすび

■スペイン語の ser と estar 鈴木覚
第一章 学者も困る ser と estar の区別
第二章 繋詞としての ser と estar
第三章 存在を表す ser と estar
第四章 不定詞および分詞における判断辞の過程的構造
むすび

■精神医学と言語学――言語障害の研究に言語学は何故寄与しえないか 黒川新二
はじめに
第一章 失語症研究と言語学
 一 脳病理学と失語症研究
 二 言語学者ヤコブソンの失語理論
第二章 言語習得過程はどう研究されているのか
 一 幼児言語研究の立脚点
 二 形式主義から内容主義へ

編集者あとがき 三浦つとむ ※2
表記についてのあとがき(文責・宮下眞二)※3


※1 この論文のみ旧かな(正かな)で収録されている。宮下氏の「表記についてのあとがき」によると、原稿では漢字も旧字(正字)だったという。また、内田・宮下・鈴木氏の論文も、原稿では略字(新字)混じりの旧かなで書かれていたと述べられている。

※2 選集3巻『言語過程説の展開』の巻頭に掲載されている「『言語過程説の展開』から『日本語はどういう言語か』さらに『認識と言語の理論』へ」は、このあとがきを元に、加筆・削除などの修正を加えたものと思われる。

※3 このあとがきでは、原稿で使用されていた旧字旧かな(正字正かな)を印刷の段階で新字新かなに変更されたいきさつと、日本語の表記に関する彼らの考え方が述べられている。以下はその抜粋。
私達は戰後の學校教育を受けたものですが、所謂國語國字改革に對して、それが「書き言葉の簡易化、國語教育上の負擔の輕減、一般民衆の智能の向上」と云ふ目的に反して、日本人の言語生活を妨げ破壊するに終つてゐることを經驗上痛感せざるを得ません。その上に私達は分野は異なれ、言語を研究して來ましたから、所謂國語改革の理論的支柱となつた歴史的比較言語學及び構造言語學の言語觀は、音聲言語を偏重し文字言語を輕視する一面的な言語觀であり、かつ言語を言語と云ふ表現自體ではなくて言語を媒介する言語規範と誤解したために、現實の言語の表現理解の活動を研究の對象とすることが出來ず、それ故に言語生活上の問題である國語問題を解決できる筈がないこと、それどころか國語問題の一因ともなつたことに厭でも氣附かざるを得ませんでした。

言語は言語規範に媒介された表現でもあります。音聲言語も文字言語も等しく言語でありどちらか一方が他方の從属物である譯ではありません。音聲言語も文字言語も、それぞれ人間の生活に必要に應じて人間の多様な思想を精確に表現すべく發展させなければなりません。その上で兩者の對應關係を發展させねばなりません。


なお、宮下氏のあとがきの漢字はできるかぎり原文に即して入力したが、異字体を含む一部の旧字は新字にしてある(というより、そうせざるを得なかったのだが)。新字にした漢字は、(1)機種依存文字の漢字、(2)ユニコードにはあるがシフトJISにはない漢字、(3)エディタ(テキストエディット等)での入力自体ができなかった漢字(グリフ入力の対象になっている漢字。これは異字体に多かった)の3種。

(090313追記)宮下氏のあとがき作成時の、私の入力ミスを修正しました。

誤「音聲言語を偏重し文字言語をする輕視する一面的な言語觀」
正「音聲言語を偏重し文字言語を輕視する一面的な言語觀」

誤「その上で兩者の對應關係を發展させなければなりません。」
正「その上で兩者の對應關係を發展させねばなりません。」
posted by liger-one at 18:13| Comment(0) | TrackBack(0) | The Tsutomu Miura Archives | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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